引越しトラブル防止!標準引越運送約款で注意するポイント
引越し業者と利用者とのトラブルを防ぐために、国土交通省が定めている「標準引越運送約款」という引越しに基づくルールがあります。
この約款(やっかん)と同じものを採用している引越し業者が多いのですが、中には独自の約款を利用している引越し業者もあります。
国土交通大臣の許可を受けたものでしたら、独自の約款を利用しても問題ありませんが、その場合は独自の約款内容に拘束されるので、利用者はその内容をきちんと理解することが大切です。(※「標準引越運送約款」との違いなどを確認しましょう)
このページでは、国土交通省が定める標準引越運送約款で押さえておきたいポイントをまとめました。
標準引越運送約款のポイント
- 適用範囲
- 見積り内容
- 運送の引受や荷物の性質の確認
- 運賃やキャンセル料等
- 責任や損害賠償
標準引越運送約款が適用される場合
この約款が適用される引越しは、原則として一般家庭の引越しでトラックを貸し切って行う場合であり、事務所の移転やトラックによる積み合わせ便などを利用した際には適用されません。
単身者などで混載便を使用した場合に適用されないことが問題点として、国土交通省は「標準引越し運送約款」の改正を2015年7月までに改正案をまとめて2016年1月の施行を目指すとしていたようです。(2015.3.31付 輸送経済新聞社)
2016年7月現在ではまだ改正されていないようですが、利用者のニーズに合わせた改正案が適用されれば良いと思います。
見積書に記載しないといけない事項
- 事業許可番号
- 荷物の受取日時(荷物をトラックなどに積み込む日時)
- 荷物の引渡日時(荷物を引越し先に搬入する日時)
- 運賃等の合計額
- 支払い方法
- 見積り担当者の氏名
- 事業者名・電話番号
- 問い合わせ電話番号
- 依頼者の氏名又は住所・電話番号
- 新居で荷物を受け取る人の氏名又は住所・電話番号
- 解約手数料の額
- 引越しの作業内容
引越しの作業内容については、引越し当日の作業員が梱包してくれるものや、自分でやる荷造りはどこまで梱包すれば良いかなど、出来るだけ具体的に記載してもらいます。
契約書の内容と引越し当日の作業内容等が異なる場合は、追加料金の発生や値引き請求(場合によっては賠償請求)ができることを覚えておきましょう。
事業者の電話番号はフリーダイヤルだけではなく、担当者に直接つながる番号を記入してもらうと安心です。
運送の引受や荷物の性質の確認
引越し業者が運べないもの、運送にあたって特殊な管理が必要なものなどが決まっています。
【引越し業者が運べないもの】
- 現金
- 有価証券
- 宝石貴金属
- 預金通帳
- キャッシュカード
- 印鑑
- 火薬類
- 灯油など発火の恐れのあるもの
- 不潔なもの
- 腐りやすいもの
【特殊な管理を要するもの】
- 美術品
- 骨董品
- 動植物
- ピアノ
【運搬はできるが注意する荷物】
- パソコンなどの精密機器
- 壊れやすいもの
引越し業者が運べないものは自分で管理することになっていて、運ぶ際に特殊な管理を要するものについては、事前に申告がない場合は引き受けできないことがあります。
植木などの植物は造園専門業者、犬や猫などはペット輸送専門業者など、引越し業者と提携している専門業者に対応してもらうことになり、高額品等については別で保険に加入しないと運送できないこともあります。
また、運搬するにあたって注意する荷物の1つに、パソコンなどの精密機器があります。
電化製品内部の故障やデータの破損については、損害責任を負い兼ねるとしているので、万が一に備えてパソコンなどの電化製品はバックアップしておきましょう。
外部が明らかに破損している場合はその責任を問うことができますが、外部に破損がない場合は、責任の所在を検証することが難しくなります。
また、割れ物など壊れやすい荷物は、段ボールに分かりやすいように明記しておく必要があります。業者側がその存在を知らないで破損・損傷があった場合は、責任を負うことはできないとしています。
運賃及び料金とキャンセル料等
引越し業者は、引越しにかかる料金の内訳を提示することになっています。
引越し料金は「運賃+人件費などの実費+オプション料金」などから成り立っています。見積り書を確認し、疑問が残らないようにしましょう。(引越し料金の内訳)
また、支払い方法についてもきちんと明記することになっています。どのタイミングで支払うのか、どのように支払うかを見積り書に記載しなくはいけません。
【キャンセル料・延期手数料】
- 前々日に解約 – 運賃の20%以内
- 前日に解約 – 運賃の30%以内
- 当日に解約 – 運賃の50%以内
平成30年6月1日に標準引越運送約款が改正されキャンセル料が上がりました。また、引っ越しの前々日の解約でもキャンセル料が発生するようになりました。
キャンセル料(解約手数料)又は延期手数料は上記の通りですが、業者側が引越しの2日前までに、「見積書の記載内容に変更がないかどうか」を利用者に確認しなければ、適用されないとしています。
業者側からきちんと連絡があった上でのキャンセルでは解約料がかかりますが、個人的にこの指針は、引越し業者にとって不利だと感じました。
繁忙期ともなれば、満足に予約を取れない引越し希望者もたくさんいて、引越し業者の方もきっちりと計画を立てていると思います。この時期のキャンセル料は、1週間前でも頂きたいくらいだと思います。
しかも、引越し業者からの確認がなければキャンセル料は払わなくても良いとのこと・・。依頼者と連絡が取れない場合を考えると、貴重な時間を割くことになります。
国土交通省は、キャンセル料や延期手数料の増額についてなどを改正する意向を示しているようですが、まだ具体的には決まっていません。
【日時変更による追加料金等】
依頼者の責任によって引越し日が変更される場合は、見積りの際に提示された運賃等の合計額を修正して良い決まりがあり、予約状況によっては追加料金が発生することがあります。
また、依頼者の責任で引越しを解約した場合、必要であれば解約料、その他に着手した附帯サービス費用を支払わなければなりません。
契約時にもらった段ボールなどの梱包資材は、返却するか実費で買い取るかすることになり、返却時の送料についても自分で負担する決まりになっています。
責任や賠償責任
引越し業者は「標準引越運送約款」において「運送業者貨物賠償責任保険」に加入しなければいけない決まりがあり、業者側の不注意で荷物を破損・損傷させてしまった場合は、損害賠償の責任を負うことになります。
しかし、業者側が責任を負わなくてもよい免責事由もあります。
【業者が責任を負わなくてもよい免責事由】
- 元々の荷物の欠陥
- 引越し業者が運べないものの運送
- 事前に申告のない特殊な管理を要するものの運送
- 荷造りの不完全
- 自然災害や交通事故に遭った場合
「長年置いていた着物や錆びやすい家具」などは、運び出す際に初めて腐敗に気付くこともあります。
荷物が始めから壊れていたり劣化していた場合や、食べ物など自然に腐敗してしまうようなものには、業者側は責任を負うことができません。
引越し業者が運べないものや、事前に申告のない特殊な管理を要するものについても、業者側は賠償の責任を負わないとしていて、責任の所在が引越し業者側でない「荷造りの不完全」等についても、責任を負うことができないとしています。
【責任の特別消滅事由と時効】
荷物の紛失や破損に気付いた場合、引越し先に荷物を搬入した日から3カ月以内でしたら、業者側に賠償責任を求めることができますが、1年以上経過してしまうと時効によって賠償の責任は消滅してしまいます。
荷物の紛失や破損に気付いた時点で、業者側に告知しましょう。過失がないように、荷解きをすみやかに行うことが大切です。
業者側が明らかに損害ないし紛失を知っていた場合は、3カ月という期間関係なく賠償する責任がありますが、期間が空けば空く程、責任の所在を検証することが難しくなります。
引越し前に、賠償責任や引越しの保険についての話を詳しく聞くことが大切です。